伝統音楽祭1・衝撃(Ennis/愛)

2c504c61.jpgクレア地方のエニスへ。
このあたりは音楽の盛んな地域で、
毎年、伝統音楽祭Fleadh Nuaが行われている。
セッションやワークショップ、コンサート、ケイリーダンス、
コンペティションなど、様々な催し物が企画されている。

街は、Clifdenよりも大きく、中位の規模といったところか。
でもこじんまりとしていて居心地の良い街である。
パブや教会、様々な店が並ぶメインストリートは
多くの人々で賑わっている。

着いた時間がちょうどイベントとイベントの合間で、
何もやって無かったので、
音楽祭のパンフレットに宣伝が載っていた
ボタンアコーディオン・ショップに行ってみようと急に思い立つ。

電話をかけてみると、そこの主人らしきおじさんが出た。
…が、話す段になって頭が真っ白になり、
「お店は何時までやってますか?」の英文が
出てこなくなってしまった…!
あわあわしているうちに、
ガチャン!と電話の切れる音が…うぅショック…。
数時間落ち込む。

夜になって、Aos Ogという、
クレア地域の優秀な若きミュージシャン、
ダンサー達のコンサートを聴きに
伝統音楽のための施設、Glor内にあるホールへ。

ミュージシャンは10代の若者達が中心。
ケイリーバンドや、
フィドル、アコーディオン、ハープなどの
ソリストの演奏も次々と行われる。
皆とても緊張していたけれど、上手だ。

…一方で、アレンジや、技法、音そのものすら、
どこか守りに入っているというか、
型にはまった…といった印象もあった。
これぞ自分の音!と主張する感じでは無いように
私には思えた。
伝統音楽を保存、継承することを
目的としているのならいいのかもしれないけれど…。

ダンサーは7,8才位から20代まで。
とても小さいのに、ステップが超速で上手な子や、
リバーダンス予備軍とまで言えるような、
美人凄腕集団など、こちらもすごかった。

長い(3時間位)コンサートの終盤は、
出演者がもう一度次々と現れ、
皆で演奏したりダンスをしたり。

…そこに突如、若者ミュージシャン達と入れ替わり、
スキンヘッドの眼光鋭いボタンアコ弾きのおじさんが、
一人、舞台袖に座ってダンスの伴奏を始めた。

…衝撃的だった。

たった一人で、ダンスチューンのメロディだけで、
ぐいぐいとダンスを操るように、引っ張ってゆく。

今まで様々な地方でボタンアコの演奏を聴いてきたけれど、
そうした「○○地方風」という枠を越えて、
そのおじさんでしかありえない、どこまでもクリアな音だった。
うっ好きだ…!

そのおじさんが、最後にステージの全てをかっさらっていった…
…位に私には思えた。

コンサートが終わり、ロビーに出てみると、
これまたレベルの高いセッションが始まっていた。

先程の出演者もぞろぞろと出てきて、セッションに加わってゆく。
ボタンアコのおじさんも出てくるかと、
待ってみたのだが、一向に出てこない。
帰ってしまったらしい…

司会進行のおじさん(といっても伝統音楽祭の主催の一人)
が出てきたので、ボタンアコのおじさんの名前を聞くと、
知らないと言う(単なる助っ人だったらしい)。

周りの人にも聞いてみてくれて、やっと、
ミホール・セクストンさんという名だと判明。
二日後にケイリーダンスの伴奏をするという。
よし、行ってみよう…!

写真は、エニスの街角にいた、アコーディオン人形集団。
皆、音楽に合わせてちゃんと蛇腹が動いていた。
右端のおじさんが多分作者。