伝統音楽祭2・ワークショップ(Ennis/愛)

2e1a90cd.jpg音楽祭の一環として
様々な楽器のワークショップがあるというので、
ボタンアコーディオンのワークショップを受けに、
St.Flannan’s collegeへ。
折角なので、
朝の初心者コースと昼の中級者コース、
両方受けてみることにする。

時間になって、教室の前で待っていると、
いきなり、一人のおじさんが話しかけてくる。
「君、ボタンアコやってどの位?」
「チューン…リールとか弾けるの?」とか。
先生かと思いきや受講生で、名前はミホールさん。
北アイルランドから来たそうで、
自分が初心者なので、こちらの様子をうかがっているらしい。

結局、生徒は我々二人きり。
入ってきたのは
ダミアン・オ・ライリー先生(22才)。
若手の実力派と地元で呼び名の高い青年らしい。

まず先生が一生懸命手書きしたことがうかがえる、
指使い付き譜面のコピーが配られる。

まずは、指使いを意識しながら、ジグのメロディを覚える。

同じボタンでも押し引きで音の違う
ボタンアコーディオンの場合、
流麗にメロディを弾くためには、
無駄に蛇腹を動かさないよう、
正しい指使いの研究が不可欠なのである。

見よう見まねでやってみる。
英語は早口で分かりづらいが、
譜面は世界共通なので、まあ出来る。
ミホールおじさんは悪戦苦闘中である。

…すると、ミホールおじさんがいきなり先生に、
「先生っ!こいつは初心者じゃありませんよ。
結構弾けるヤツなんです。試しに何か弾かせてごらんなさい!」
とうそぶく。

先生は困って、私に
「本当?それなら中級者コースに出れば良いんじゃないかな…。
まあなんか弾いてみて」
などと言う。

しぶしぶ弾いてみせると、ミホールおじさんが
「ほらねーほらねー弾けるでしょう、この子!」
などと先生に言う。くっ…大人しくしているのに…

「日本にはボタンアコの先生がほとんどいないんです…
日本は遠い国です…涙」
などと、しおしおと二人をなだめて、授業再開。

ミホールおじさんはその後も先生に
「俺の先生と指使いが違うから分からない!」
などとつっかかっていたのであった。

引き続き中級者コースも、我々二人。
ダミアン先生、今度は私をフィーチャーして
教えてくださったのだが、
音楽はともかく、英語が不自由な私…。
説明を聞く私の顔が「きょとん」
としているように見えるらしく、不安げな顔をする。
顔はこうですが、理解してますってば!
早口を聞き取るためにきょとんとしがちですが…
おまけにしゃべりがしどろもどろだけど…

音楽難(失礼)のミホールおじさんと、
英語難の私…。

どちらに教えるか…
二者択一を迫られた真面目な若きダミアン先生は
本当にお気の毒であった。

長いワークショップが終わって、
ダミアン先生は心底ほっとしたようで、
自分が持ってきた教材を全部置いて帰ってしまった。

残されたのは大量のコピー譜。
今回使わなかった譜面もいくつか。
…あぁ、生徒がたくさん来ると思って
一生懸命準備したんだろうなぁ…かわいそうに…

私自身は、疑問や謎もとけたし、
いいヒントもたくさんあって、
有意義な時間であった。

…そして、このミホールおじさん、
ワークショップが終わる頃には、
私への猜疑心?も消えたらしく、
すっかり仲良しになってしまったのだった。

かなりのアコーディオンマニアであることが
判明したミホールおじさんは、私を車に乗せ、
これまたいきなりアコーディオンをめぐる旅に出発したのであった。