イエイツとAll of me(Sligo~Westport/愛)

dc1dac20.jpgドニゴールから、スライゴー経由で(眼鏡をゲット!!!)
メイヨーのウエストポートへ南下。

スライゴーでは、
ノーベル賞詩人、W.B.イエイツのお墓のある、
ドラムクリフ教会に立ち寄る。

スライゴーはイエイツの母方の故郷で、
イエイツに縁深い地。
イエイツ・カントリーなどとも言われる。

話は少しそれるが、
イエイツは日本の「能」にも興味があって、
能に影響を受け、アイルランドの伝説をもとにした
「鷹の井」という戯曲を残している。

その「鷹の井」を逆輸入し、
「鷹姫」という能が日本で作られた。
鷹姫の守る不老不死の泉をめぐる物語で、
人間の生と死、老いと若さの残酷を
描いた作品である。

私はその能を高校生の時に観て感銘を受け、
結果、その後の10年間の運命が決まった。

めぐりめぐって、今こうして
イエイツのお墓の前に立っている。
遠い東の国、日本に思いを馳せる
イエイツの果て無き想像力と夢見る力を
あらためて思い、
10年分の感慨にふけったのだった。

教会からは、イエイツの愛した台形のかたちをした山、
ベン・ブルベンも見える。
緑濃く、降りかかるような光が美しい。

夕方頃、ウエストポートに到着。
ユースでまたもやカレーを作り(…)、
夜は、名フルート奏者、マット・モロイの
アイリッシュ・パブ「MATT MOLLOY’S」へ。
が、演奏スペースの部屋は、観光客でごった返し、
それに合わせた感じの演奏で、なんというか、ユルい。
じっくり聴く環境でも無い。

その隣のパブでも演奏していたので入ってみると、
フィドル&ギター・ボーカルのおじさんデュオがライブ中。

ほっそりしたフィドルのおじさんは帽子を目深にかぶり、
無表情に淡々とチューンを引き続ける。
まさに職人、といった演奏である。
歌の裏メロになると、カントリーな感じでこれまた味がある。

対するギター・ボーカルのおじさんは、
恰幅が良くニコニコしながら、
ブルースっぽいアプローチのギター伴奏が格好良い。
歌は、パブソングに始まり、
All of meやテネシーワルツなどスタンダード系も幅広く。
その声には古きアメリカ映画から流れてきそうな
おおらかさがある。艶のあるいい声…!

テーブルにある二人のギネスのグラスが
半分位になると、店員が新しいギネスを持ってくる。
すごいペースだ…
ギネスが来ると二人とも本当に嬉しそうで、
演奏も上機嫌になっていくのだった。

アイリッシュアイリッシュした演奏ではなかったが、
心から楽しめる、いいノリと、至芸のライブだった!
何かトラブルが起こりそうになっても、
涼しい目配せ一つでぴったり息が合う。
この二人、相当長い付き合いなんだろうなぁ…
昔はどちらも結構な悪ガキで…なんて想像してしまう。

ライブ後、ギターのおじさんは、
帰って行く外国人お客さんたちに
それぞれの国の言葉で(!)「さよなら」と声をかけていた。
ドイツ人にはドイツ語で、フランス人にはフランス語で、
勿論、私には日本語で…
すごいなぁしゃべってもいないのに…

さすがベテランの余裕というか、
演奏中、我々客側のこともじっくり観察していたのであった…。