ブリガドゥーン(Ayr/蘇)

3fe2f793.jpg朝、スカイ島からバスで一路本土に戻り、
フォートウィリアムス、
そこから汽車でグラスゴー、乗り換えてAyr(エア)へ。

エアは、スコットランドの国民的詩人、
ロバート・バーンズが幼少時代を過ごしたところで、
いわゆるバーンズ・カントリーと言われる一つである。
Rivendellでもバーンズの詩が美しい「Afton water」を
アルバムに収録している(インストだけれど…)

汽車の移動に時間がかかり、到着したのは17時。
急いで生家の残るバーンズコテッジに行くが、
閉館間際で、資料館だけ見せていただく。
膨大な手紙の量!綺麗に綴られた文字。
沢山の詩も書き、筆まめ君だったんだなぁ…
情熱的かつ律儀な人である。

さらにバーンズの代表作「シャンターのタム」という詩の舞台となった、
BRIG O’DOON(ブリガドゥーン)へ。「ドゥーン川の橋」という意味である。

ブリガドゥーンと言えば、
往年のMGMミュージカル映画に、
ジーン・ケリーとシド・チャリシーが主演する
「ブリガドゥーン」という映画がある。
スコットランド奥深くの高原に
百年に一度現れる不思議な村、ブリガドゥーン。
そこに迷い込んだ男が村の娘と恋に落ち…
といったストーリーで、音楽もダンスもセットも素晴らしく、
大好きな映画である。

…で今回の旅前に、ブリガドゥーンという場所が実際ある事を知り、
どうしても行ってみたかったのである。

坂を上がってゆくと、あふれんばかりの緑の中、
隠された楽園のようにひっそりと、見事な石橋がかかっていた。
これがブリガドゥーン…!

そういえば、映画でも、村の境界に橋が架かっていた。
しかし素朴な疑問ながら、
何故ここの名前をとったのだろう…?

余談ながら、映画のバックグラウンドには、
カローデンの戦いで敗れたジャコバイト軍、
その文化を守るためにその時から
村ごと眠りについた、という
スコットランドの伝説があるそうである。
(『図説スコットランド』河出書房新社)

バーンズの話題に戻って、
エアは雰囲気がイングランドに似た(といっていいのか分からないが)
緑輝く田園風景が広がる、大変美しいところだった。
バーンズの詩の中には、そんな自然を彷彿とさせるような表現、
空気感があふれんばかりにある。

一生を貧困に苦しみながらも揺るぐことなく
(バーンズの父もまた熱心なジャコバイト党
だったことにより没落した)、
数々の力強い人間讃歌や愛の詩を生み出したバーンズの
感性の源の一つがここにある、と思った。