流薔園へ続く…

0ef569d8.jpg先日、たまたま用事があって、
小学生時代を過ごした世田谷の方に立ち寄り、
ついでに近所を散歩。
歩いていると、もう絶対思い出すこともないと思っていたような
遠い子供の記憶が次々とよみがえったりして不思議…
忘れていたことを思い出すって気持ちいいなぁ…
(ただし良い思い出に限る!)

ところで、
最近、中井英夫の『虚無への供物』
(ミステリであってミステリでない、ある一族に起こった悲劇…
というと短絡的だけれど、兎に角面白くそして問題作)
他何冊か著作を読み返していて、
この町内に一時期、その中井英夫(故人)が、
薔薇を愛し「流薔園」と名付け
住んでいた家があった事を知りました。

歩いてみて分かったのですが、
私がよく遊びにいっていた友達の家のすぐ先あたり。
小学生の頃の私の「世界の果て」はその友達の家だったので、
その先に踏み入れる事は無かったのですが…

同じ時代、同じ町の地続きに
作者が暮らしていたなんて
今こうして活字を読んでいる者にとっては
すぐ隣り合わせに異界へ通じていたかのような
不思議な感覚です。すれ違っていたかもしれないし…

…しかし、そんなことで町内を長々ぶらぶらしていると
ただのアヤシイ人なので、早々に帰りました!

写真はその近所にある神社。子供時代よくここで遊びました…

本によっぽどのめり込むと、作者はどんな人物で、
どんな時代背景や環境でその作品をものしたのかを
知りたくなってしまいます…
(虚無、は世田谷で書いたのではないけれど)
中井英夫は壮絶な人生を歩んだ方だったようですが、
そこから生まれて来た作品群は
命の叫びであり、昇華された結晶体であり…
音楽もまたそうですが…そうありたいです

余談:『虚無への供物』は、当時、
江戸川乱歩賞次席となったのですが、
その年の受賞作は、先日蛇腹姉妹ライブの時、
1曲歌ってくださった、ライブハウス「青い部屋」の女主人、
戸川昌子女史の『大いなる幻影』
(氏は小説家でもいらっしゃるのです)。
…というわけで、感激もひとしおでした…