「ダビング」フィンランドレコーディングへの道-その10-

Timoさんは、私の出したアレンジプランに合わせて、全てのピアノを録りなおし、送ってくれた。譜面も全て作りなおしてくださった。今考えると、超多忙のTimoさんがこれだけの細かいやりとりをよくやってくださったと思う…。12曲分も!感謝するばかりである…

そして今度は「これにアコーディオンを重ねるとどうなるかな?」と来た。…そうですよね、そう来ますよね…
時代遅れにもほどがあるが、私はダビング、いわゆる重ね録りを自分でやったことがなかった。仕事で宅録が必要な場合は、優秀なエンジニアでもある、オオフジツボのヴァイオリンの壷井さんにバイトでお願いしているのだった…

これはいよいよ自分でやらねば…となった時に、バンド「代官山王国」のアコーディオン奏者で生徒の藤井さんが、スマホでダビングが出来る「Spire」というアプリを以前教えてくれたことを思い出した。iPhoneに入れてあった!そして一晩あーだこーだしていたら…出来た!ちょっとしたリバーブもかかる~!!

Timoさんのカウントを聴いて音を入れはじめる。メトロノームではない、Timoさんのリズム感のみで弾いている音源に音を重ねるのは難しい。
でもこのダビング作業が、Timoさんのリズムや奏法を体にしみこませるのにとても役に立った。Timoさんの間を覚える位何度も聴きこみ、Timoさんの心地よい揺れに乗って、フレーズを弾いてゆく方法を身に着けた。

この頃は私も超忙しくて、午前様で帰宅してからダビング作業に取り掛かることもしばしば。弾くフレーズを決めて、ちゃんと聴いてもらえるレベルに弾けるようになるには、早くて二時間はかかる。録れるのは一日一曲。

音源を送る時間が日々日本時間の明け方だったからだろう、Timoさんは途中で「もう大体分かったから、これ以上無理して送らなくていいよ」と言ってくれた。しかし!これぐらいのダビングが出来るレベルになっていないと、現地ですぐにコンサートやレコーディングなんて出来ないぞ…と危機感を感じ、録り続ける。

Timoさんの方も、私のダビングを聴いて、アレンジを修正してまた音源を送ってくれたりもし、ハードなキャッチボールは、フィンランド行き前日まで続けた。